
他では聞けないくすりのはなし
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いまでこそ、粉のお薬は、自動で分けて包むことのできる機械があって、我々薬剤師は非常に助かっていますが、その昔は、薬包紙に一包、一包、手で分けて包んでいた時代がありました。昔の市販の風邪薬は、薬包紙に包んであったように思います(苦い薬でした。私、若いつもりでいますが、そんなことを知っているのは、年なんですかね)。一枚の四角の紙で粉薬を包むことができることを、幼心に不思議に思いました。
(↓これが機械(散剤分包機)を使って包んだものです)

(↓これが薬包紙を使って包んだものです)

だから、昔の薬剤師やその助手さんは、その包む作業に非常に長けていて、早くできる人が「できる人」みたいな評価をされていました。今の機械を使えば、一包、一包の粉の誤差はほとんどないのですが、薬包紙を使っていた時代は、人の手で分けていたものですから、どうしてもひとつひとつに誤差を生じていました。その誤差をいかに少なくして、早く包むことのできるかが薬剤師の技術のひとつであったりしました。
私も実際に、薬包紙の包み方は、大学の実習であって、大学の先生には「折り紙とは違うぞ」と言われたように記憶しています。就職してからはほとんどやったことはありません。しいてやったといえば、結核のカプセルの薬でリファンピシンという薬がありますが、その薬がカプセルのまま飲めない患者さんに、中味を出して調剤する際に薬包紙でつつんだことがあります。リファンピシンの実際の中味は、赤い粉です。それを散剤の分包機を使って分包した後で、白い粉を分包すると、機械に付着していた赤い色が白い粉に混じって出てきてしまいます。そんなことを防ぐために、薬包紙にカプセルから赤い粉を出して、包んだという経験があります。
たしかに現在の機械で分けた方が、きちんと分けることができるのですが、薬包紙で包んであった薬の方が、なんだか、人の手の暖かみがあるように思います(サイエンティストとしてそんなこと言うのはいけないことかもしれません)。薬剤師の業務も機械的にするのではなく、薬包紙を使っていた頃の暖かみを出して仕事をしたいものだと思います。
なお、薬包紙の折り方をときどき聞かれますので、薬包紙の折り方の項を作りました。
(1998/02/11;2001/01/16更新)
(追加)
この項を見られた方から、メールを頂きました。青色の文字の部分がその方の文面です。抜粋して掲載します。
たしかに現在の機械で分けた方が、きちんと分けることができるのですが、薬包紙で包んであった薬の方が、なんだか、人の手の暖かみがあるように思います(サイエンティストとしてそんなこと言うのはいけないことかもしれません)。薬剤師の業務も機械的にするのではなく、薬包紙を使っていた頃の暖かみを出して仕事をしたいものだと思います。
とありましたが、クスリの効き方にはプラシーボ(プラセボ)効果(何も薬の成分が入っていないものでも、効くぞと思って服用すると効いてしまうこと;佐藤注釈)のような心理的な側面がありますから、患者さんがそのことで暖かみを感じたり信頼感・期待感が増すとしたら、そこには重要な意義があると考える方がサイエンティストとしてのまっとうな態度ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
特に、心理的な要因が関わる神経的、心身的な疾患(癌もふくめて)の場合や被暗示性の高い患者さん、防衛的な姿勢の強い患者さんの場合などは問題ではないでしょうか。
多くの医療現場では、人間の生理的側面ばかりに目をむけ、心理的側面が疎かにされていることに疑問というより、その無神経さに憤りに近いものを感じている一人です。(自分の患者体験からも … )
また更に、同じ方からメールを頂きました。
ほほえみという表情を暖かみがあると解釈するのを錯覚というならば、「薬包紙で包んだ方が暖かみがある」というのも錯覚かもしれませんね。
また、薬剤師側が「薬包紙で包んだ方が暖かみがある」と一方的に決め付けて、その考えや思いを患者さんに押し付けているとしたら、これは明らかに錯覚というべきでしょう。
その場合、「クスリを薬包紙で包む」という行為(アクションランゲージ、多くの場合ボディランゲージのような無意識メッセージ)にどんな「信条や思い」が込められているかということと、そのメッセージがどのように伝わっているか、という受け取る側の「感受性と読み取られ方」をチェックしてみる必要性がありそうです。
ご存知のことと思いますが、そこでは「クスリを薬包紙で包むという行為」とともに、そのクスリがどのようなプロセス・メッセージ(言葉、声の調子、まなざし・表情・しぐさなど)を伴って渡されるかという「トータルなメッセージ」が重要になります。それがどう受け止められ、解釈されるかによって心証や信頼感とともにコンプライアンス(薬を忘れずに、きちんと飲むこと;佐藤注釈)や治療への期待や意欲、効果や副作用の現われ方が大きく異なってくるからです。
医療現場では、ともすると患者さんの心理面について軽視しがちです。そのようなことにも注意をしていくべきですね。
(1999/01/07追加;1999/01/10更新)
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制作・著作:
佐藤賛治 (薬のご質問にはお答えできません)(http://d-inf.org/drug/)