
他では聞けないくすりのはなし
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サリドマイドは旧西ドイツのグリュネンタール化学会社が開発した睡眠剤で、もともとはてんかん患者の抗痙攣剤として開発されていたもの。これを服用した妊婦より手足の奇形(アザラシ症)がある子供が産まれるという悲劇が起こりました。時に昭和30年代半ばのことです。
当時のこの薬の売り文句としては、早く深い眠りにつけるうえに、副作用が少ないため大量使用しても死亡することはなく、睡眠薬の服用による自殺も防止できるといったもので、その時の一般的な睡眠薬となり、病院や精神科施設などで広く使われるようになりました。特に、妊娠中のつわりの苦痛を除くのに用いられました。
この事件は、西ドイツ国内だけにとどまらず、日本を含む各国に広がりを見せました。しかし、昭和36年(1961)11月、西ドイツのライン・ウェストファーレン小児科医師会会議でハンブルグ大学のW・レンツ博士がサリドマイドと四肢奇形の関係の研究報告をして以来、サリドマイド含有の医薬品は全面的に回収となりました。(ただ、アメリカだけは許可申請中の段階で、治験段階に発生した数名の犠牲者だけで食い止められました。これは、FDA(食品医薬品局)の審査官F.C.ケルシー女史がサリドマイドの毒性・副作用に疑問を抱き、継続審査していたためで、彼女は資料の不備を指摘し、医薬品として承認しなかったことに対して、ケネディー大統領から特別金賞が授与されています)
現在では、サリドマイドは光学異性体(まったく同じ原子構造のものが、左右の手のように重ね合わせることができないもの)が存在し、l体に効果があり、d体に副作用があることが分かっています。つまり、l体だけのサリドマイドであれば、そのような悲劇が起こらなかったということです。開発当時、それらは分離することができなかったのですが、現在では分離できることが分かっています。(その2つを分離することは可能なのですが、l体は徐々に体内でd体へと変化することが後にわかっています。ですからl体だけを服用しても胎児への影響は避けられません。(2005/01/22追加))しかし、もう再び医薬品として認められることはないでしょう。

この事件は、個人的なことながら、私が母親のお腹に入っていた時期に一致します。昔、母親から、「私はそんなことなかったけれど、眠れなくて、サリドマイドを飲んでいたら、あんたも奇形児だったかも知れない」と言われた記憶があります。だから、全然、違う世界のことではなく、身近に感じる事件であります。
(1998/07/26)
(追記)
「サリドマイドは、もう再び医薬品として認められることはないでしょう」と書きましたが、FDA(米食品医薬品局)は、ハンセン病に伴う炎症の治療薬として認可をしました。ハンセン病の特効薬として知られており、また、闇で取引をされていたという現状を考えると、仕方のない選択であったようです。
ただし、当然のことながら、非常に厳しい使用制限がかかっています。指定された医師しか使うことができず、また、女性患者だけでなく男性までも避妊をしなければなりません。
有効性と安全性を天秤にかけ、副作用の発現(奇形児が産まれてくること)に最大限に注意を払い、それでも尚、サリドマイドが必要であるという判断ですね。私は、そのことは正しいと思います。
(1998/08/02追記)
(さらに追記)
さらに、サリドマイドの新しい薬効として、骨髄のがんである骨髄腫に有効であることがわかり、患者の会「日本骨髄腫患者の会」が窓口となってこの7月6日までに、ブラジルから輸入されたということです。
症状で見ると、約3分の1の患者が改善したという報告があります。アメリカでは既に1998年10月に骨髄腫の承認がとれています。日本国内では、製造再開の動きはなく、現在は世界中さがしてもアメリカとブラジルだけでしか製造されておらず、アメリカの製薬会社はカナダ以外に輸出しないということなので、ブラジルから輸入されたということです。輸入されたサリドマイドは、全国6医療機関に届られたそうです。
(2000/07/29追記)
このサイトでの関係記事:「サリドマイド再び」 「最近のサリドマイド使用の実態」
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制作・著作:
佐藤賛治 (薬のご質問にはお答えできません)(http://d-inf.org/drug/)