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他では聞けないくすりのはなし

輸血用血液製剤のウインドウピリオド(空白期間)

 はじめに

 このサイトで1999/10/30に「献血からHIV感染」に、輸血用血液製剤には献血者が感染したばかりで抗体検査でチェックできない空白期間(ウインドーピリオド)があると書きました。つまり検査にひっかからなくてもウイルスが輸血用血液製剤の中に存在しているものがあるということです。
 輸血後肝炎の発生頻度は昔に比べれば格段に少なくなっています。
 http://www.hokkaido.bc.jrc.or.jp/laboratory/info007.htm

 ウインドウピリオドは何日?

 実際のウインドウピリオドはどんなものかといいますと、愛媛県赤十字血液センターホームページに書かれてあります。http://www.ehime.bc.jrc.or.jp/about/kanri.html
 抗原・抗体検査を核酸増幅検査(NAT)とのウィンドウ・ピリオドの比較
(参考:Schreiber.G.B.et al ;NEJM,334(26):1685−90,1996より引用)
ウィルスの種類 検査方法 ウィンドウ・ピリオド
B型肝炎ウィルス HBs抗原検査 約59日
NAT(HBV DNA) 約34日
C型肝炎ウィルス HCV抗体検査 約82日
NAT(HCV RNA) 約23日
ヒト免疫不全ウィルス
(エイズウィルス)
HIV-1、2抗体検査 約22日
NAT(HIV RNA) 約11日

 NAT検査は、日本赤十字社血漿分画センター(北海道千歳市)、東京都南十字血液センター(東京都大田区)、日本赤十字血液管理センター(京都府福知山市)の三ヶ所で24時間体制で行われており、B型肝炎ウィルス約34日、C型肝炎ウィルス約23日、エイズウィルス約11日となっています。
 今はNATという検査方法で行われていますので、ウインドウピリオドが短縮されているのがわかります。短縮されたと言ってもどうしても0日にはできないのが現状です。

輸血用血液製剤

 どれくらい「すり抜けて」しまうのか

 今年4〜6月の3カ月で、輸血によってC型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスに感染した疑いのある患者が、医療機関などから29人(C型肝炎11人、B型肝炎18人)報告されていたことが、厚生労働省の調べで分かっています。
 このうち28人分は、献血者の検体を高感度の方法(NAT検査)で再検査しても、ウイルスが検出されない「陰性」だったとされています。

 輸血の際の同意書

 どうしてもウイルスの混入を0にできないため、輸血用血液製剤を投与するときは、投与する意義・起こりうる副作用などと主治医が説明して、納得してもらった上で同意書をとっています。
 輸血の副作用を日本内科学会ホームページhttp://www.naika.or.jp/より抜粋します。
 輸血に際して起こりうる副作用
 献血者に対しては詳細な問診,血液型,ウイルス等の感染症の検査を行っております.また,血液の保存,管理,使用法等に関して最善の方法で対処しており,そのため輸血の安全性はこの10年で格段に向上しています.しかし,輸血の副作用や輸血に伴う合併症は皆無とは言えません.副作用発生率はおよそ以下の通りです.(10本輸血されたとして)
(1)輸血後肝炎(主にC型)1/2000
(2)エイズ1/10万以下
(3)輸血後移植片対宿主病(GVHD)1/2万〜1/10万
(4)溶血反応 軽症1/1000・重症1/1万
(5)アレルギー,蕁麻疹,発熱 1/20〜1/100
 (アナフィラキシーなどの重症型は約1/1万)

 対応は?

 厚生労働省は、検査で陽性になった献血者については過去の献血のときにウインドウピリオドであった可能性があるということで、献血歴を調べその血液を使わないようにさせようと日赤側に働きかけています。
 昨年6月13日から今年7月21日の間に採血された延べ598万451人の献血血液のうち採血後の検査で、肝炎ウイルスなどに感染している疑いが判明した献血者の前回の献血を追跡調査したところ、前回の検査をすり抜けた可能性がある輸血用血液製剤6419本が医療機関に供給されていたことがわかっています(実はこの調査の前に、調べる調べない、回収せよ回収しないで両者の間でもめたらしいです)。で、実際に回収されたのは、13本だけだったとのことです。
 赤血球製剤が採血後21日間、血漿製剤が1年間、血小板製剤が72時間であり、採血種類によって最大で約4ヶ月間は間隔を空けないとできない献血の間隔を考えると、血漿製剤以外回収はほとんど無理というのが現状です。
 献血の間隔に関してはこちら→ http://www.jrc.or.jp/sanka/blood/terms/index2.html
 厚生労働省としては、1年間の有効期限のある血漿製剤(新鮮凍結血漿)を安全と分かるまで保管する(つまり次の献血の際のNAT検査結果がでるまでは医療機関に供給しない)ことや、アルブミン製剤などの血漿分画製剤ではウイルスの不活化する技術がほぼ確率されていますが、それを輸血用血液製剤でできないか検討することを求めています。
 平成14年7月30日に公布された「薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律」のうち、生物由来製品の安全確保対策の充実に係る部分が、平成15年7月30日に施行されています。
 →医療関係者向け説明文はこちら http://www.mhlw.go.jp/qa/iyaku/yakujihou/index.html
 今回の厚生労働省の対応は、この法律を十分ににらんだものだと思われます。
 やはり従来通り、輸血は有益性と危険性を十分に考えて、どうしても必要なときに患者さんに説明した上で投与をするということに落ち着きます。
 (参考)

(2003/08/08)

<追加情報>
 上に書いたように、今回献血でウイルス検査でひっかかって前回の献血でウインドウピリオドだった場合でも、いままで保管期間なしで輸血用血液を出荷しているため、回収が間に合わないという問題がありました。この度その対策がとられるようです。
 輸血用血液の中で新鮮凍結血漿で実施され、その保管期間を段階的に延ばす計画で、今年10月末までに2か月間、2005年3月までに4か月間の保管をし、最終的には2006年3月までに他の先進国並みの6か月間を実現する計画であるとのことです。
 それは、リスクマネジメントの点から考えるととてもいいことだと思います。しかし、もうひとつ現場の立場として考えなければならないことは、有効利用の問題です。いまのところ、病院に納品されたときでもほぼ丸々残り1年の有効期間がありますが、保管期間が6か月となると、納品されたときには、もう半年しか有効期間が残ってないということになります。6か月もあれば十分ではないかと思われるかもしれませんが、あまり輸血用血液が使われていない施設においては、結構深刻な問題です。血液製剤の有効利用を考えると、少々問題があるかもしれません。
 また、対象が新鮮凍結血漿だけに限られてます。有効期間が短い赤血球製剤や血小板製剤が、対応されていないのも問題です。

(2003/10/25追加)

<追加情報2>
 この12月29日、HIVウイルスに感染した献血者の血液が、NAT検査をすり抜けて医療機関に出荷され、この製剤を輸血された患者さんが、HIVに感染していたことが日赤の調べで分かったとの報道がありました。新鮮凍結血漿での感染だとのことです。他にも赤血球製剤と原料血漿が製造されましたが、こちらのほうはうまく廃棄や回収ができたとのことです。
 1999年にNAT検査導入後、これで2回目のすり抜けで、1回目は運良く実際に患者さんには輸血されませんでしたが、今回初めての感染例ということになります。NAT検査でのウインドウピリオドは、B型肝炎ウィルス約34日、C型肝炎ウィルス約23日に比べて、HIVウイルスは約11日と短いのにかかわらず、ついに出てしまったかという思いがします。
 新鮮凍結血漿製剤は日赤での保管期間を延ばすことが検討されている最中であっただけに、日赤側の責任も追求されそうです。

(2003/12/30追加)

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制作・著作: 佐藤賛治 (薬のご質問にはお答えできません

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