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他では聞けないくすりのはなし

抗生物質の皮内反応試験廃止へ

 以前に「注射の前のテスト」にも書いたように、抗生物質の注射剤を患者さんに投与する際には、極少量の成分を皮内注射して、ひどい反応がでないかどうか確かめていました。それはどうやら日本だけでしか行われておらず、おまじないのようなものかなと思われます。諸外国はというと、例えばアメリカでは、ペニシリンアレルギーの既往がある場合のみテストが行われているようです。
 抗生物質の皮内反応試験は、造影剤のテストアンプルと同様にエビデンスに乏しいと言われています。やっても意味がありません。事実、皮内テストでは陰性だったにもかかわらず、実際に抗生物質を投与してアナフィラキシーショックが起きた例が少なからずあるとのことです。ついつい皮内反応を行って陰性だとわかると安心してしまいがちなのですが、そうではありません。
 今まで、日本で抗生物質の皮内反応試験が行われてきた理由はというと、慣習的に行っていたり、患者にショックが起きて不幸な結果になった場合に、医療訴訟をおこされたときの対策だという意見があります。また、その昔の抗生物質は純度が悪く、ショックを起こしやすかったということがあります。「薬の歴史・薬害の歴史〜(2)ペニシリン・ショック死事件」に書きました、昭和30年代に多発した「ペニシリンショック」は、その原因が不純物にあったとする推測が主流のようです。今は純度が高くなっていますが、そのころの名残が残っているのかもしれません。
 いまのところ、抗生物質の添付文書には(全てではありませんが)、「事前に皮膚反応を実施することが望ましい」などという記載がされています。しかし、近日中にその記載が削除される予定だと聞いています。日本化学療法学会が抗生物質の皮内反応テストは無意味であるとの意見を厚生労働省に出して、それが通った形です。
皮内反応液
 皮内反応テストをすることよりも、十分な問診と、アナフィラキシーショックが起きたときに対応できる体制を整えることが大事です。抗生物質投与前の問診とは、薬剤投与歴やアレルギー歴に関して十分に行って、特に抗生物質などによるアレルギー歴は必ず確認しなければいけません。また、抗生物質の皮内反応テストは全面的にやらなくてもいいということではなくて、アレルギーがある(または疑われる)患者さんにはその有用性が認められているので、従来通りやったほうがいいと思います。
 抗生物質の皮内反応試験を廃止するということは、一見医師や看護師が楽になったように思えますが、その裏にはショックが起きたときには、しっかりと対応しないといかんということです。添付文書から皮内反応テストの実施の項が削除されても、ショックが起きてその後に適切な処置がされないと、医療裁判で負けると考えられます。
<参考>
●社団法人日本化学療法学会:抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドラインとその概要版
http://www.chemotherapy.or.jp/journal/reports/hinai_anaphylaxis.html
●薬剤ニュース:抗生物質の皮内反応は必要か
http://www.sam.hi-ho.ne.jp/tootake/s62615.htm

(2004/10/16)

 この件について、厚生労働省:医薬品・医療用具等安全性情報No.206(2004年10月)の、「注射用抗生物質製剤等によるショック等に対する安全対策について」で、詳細が掲載されています。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/10/h1028-2a.html

(2004/10/31追加)

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