
他では聞けないくすりのはなし
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結核の薬は、3〜4種類の薬を最低6ヶ月続けないといけないという話は、結核の話(2)〜治療薬で書きました。少々の副作用が出ても治療は続けられます。しかし、それは程度問題で、あまりにもひどい副作用が出た場合は、投与量が減ったり中止になったりします。
病院薬剤師の私が、数年前に呼吸器内科病棟で経験した例を紹介します。
症例1
新たに肺結核という診断がついて、抗結核薬4剤の投与が開始となる50才代の男性患者さんがいました。初回は、ひととおり薬のことを説明しました。
治療が開始されて2〜3ヶ月経ったころだったと記憶していますが、顔面の発赤・発疹と同時に口内炎が出てきてしまいました。又、肝機能も低下してきていました。口内炎の方はひどく、痛くて食事ができないほどで、見るからに痛そうでした。
薬を減量してもなお症状がよくならないので、一時中止となり、副作用がおさまるのを待って再び投与が開始になり、結核の症状もよくなって、無事に退院されました。
症例2
同じく新たに肺結核という診断がついて、それら3剤を飲み始める患者さんで、40才代の男性の方でした。はじめは調子がよかったのですが、投与1ヶ月くらいしたところで、食べ物の味が分からないという味覚障害が起こってしまいました。患者さん:「何を食べても味がしないんだよね」 私:「それは辛いですね。薬というものはどんなものでも大なり小なり副作用がつきものなんです。で、一方、結核の薬は風邪薬のように、何日間のんで症状が治まったからといって止めてしまう薬ではなく、数カ月飲み続けて初めて効果が現れるお薬なんです。すごく重くて、下手すると死んじゃうようなものとか、耐えきれない副作用が出たときは飲むのを止めることになりますが、そうじゃなかったら、なんとか飲んでもらうようにお願いします。薬の作用と副作用を天秤にかけながらということになるんです。」 患者さん:「でもね、何を食べても味がしないというのも、結構辛いものですよ。」
その味覚障害は抗結核薬のせいであろうということで、薬の量が減り、最終的には中止になったのですが、味覚障害は改善されませんでした(若干、改善されたかもしれませんが、元のようには戻りませんでした)。結局、飲みはじめて数カ月経ったところで、ある日突然、お亡くなりになってしまいました。原因はよく分かりませんでした主治医もよく分からないというコメントでした。私としては(私だけじゃなくて、主治医も看護婦もそうだったでしょうけど)、非常にショックでした。
それらの添付文書(薬の効能書き)には、味覚障害の副作用が起きるとは書かれてありませんでした。今から思うと、厚生省の方に未知の副作用ということで報告すべきだったと思っています。反省・・・・・。
以上、私の経験した結核患者さんのうちで、記憶にある患者さんのことを書いてみました。記憶に残るということは、あまり普通の症例ではないということかもしれません。現に、今結核にかかられている患者さんが見られると、特に症例2などはびっくりされてしまうかもしれません。
みなさんをただ脅かしているのではありません。ここで私が言いたいのは、結核の治療が、いい薬が出てきた今日でも患者さんそれぞれ千差万別で、一筋縄ではいかない場合もあるのだということです。(大体は、薬をきちんと飲んでいれば、治癒するケースがほとんどなんですけどね)
結核の話(1)〜結核は怖い!でも書いていて、繰り返しになってしまいますが、結核は過去の病気ではなく、現在でもあなどれない怖い病気です。
(一応このシリーズは完結です)
(1999/08/28)
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制作・著作:
佐藤賛治 (薬のご質問にはお答えできません)(http://d-inf.org/drug/)