ホーム > 他では聞けないくすりのはなし > 薬に関するいろいろなこと >

logo.gif

他では聞けないくすりのはなし

新薬が世に出るまで(1)

 薬のもともとの材料は、カビやキノコ、細菌などの中にいる微生物などです。例えば、一番はじめに抗生物質として発見されたペニシリンはカビの一種ですし、今一番売れている医療用医薬品である高脂血症治療剤メバロチンもカビの一種から発見されました。
 新薬を開発する製薬会社は、日々薬の材料になりそうな新しい微生物を探したり、新たな化合物を合成したりしています。土・海水・葉・キノコなどいろいろなところから採取してきて、その培養液の中から物質を取り出しています。その努力は地道なものです。公衆トイレから定期的に尿タンクを回収して、研究機関に卸している業者もいるとかいう話です。
 そのようにして、宝くじに当たるかのような偶然性から、新薬のもとは生まれます。この薬になりそうなものを探すのに平均2〜3年かかります。その後、人間に投与する前に、有効性と安全性を確かめるために動物を使って試験されます。ヒトに使った場合の致死量の目安、発ガン性の度合い、遺伝子への影響、薬の体内での薬の動き(吸収・分布・代謝・排泄)、薬の剤形(注射がいいのか錠剤がいいのか)などが検討されます。その間、3〜5年というのが平均です。
 その過程の例として、先述のメバロチンの話を書きます。

産まれたよ〜

 メバロチンは、京都産のコメ粒に生えた青カビの一種が作るコレステロールを下げる働きをする化合物「ML−236B」の発見から開発が始まりました。しかし、その物質は試験管内の試験で強いコレステロール合成阻害作用を示したというのに、ラットやマウスを使った実験では全然効き目がありませんでした。製薬会社内部では、イヌを使った実験をすべきという意見がありましたが、その実験は非常にコストがかかるため、その物質がそれだけのコストと時間をかける価値を持つ物質なのか結論が出ず、2年間も研究が中断したといいます。
 そこへ動物薬の開発をしているグループが、長年実験に使われ引退を待つばかりだった1羽のニワトリを「ML−236B」の実験用に譲ってくれました。都合のいいことに、そのニワトリは年老いて、コレステロールがたまり動脈硬化を起こしていました。そのニワトリに「ML−236B」を投与したところ、コレステロール値が顕著に下がったのです。この実験がメバロチンの開発の道を開きました。
 その後、イヌに「ML−236B」を投与したとき尿中に生じる微量代謝産物が、「ML−236B」そのものよりコレステロールを下げる効果が強いことが分かり、それがメバロチンのもととなりました。
 ・・・とこのように、薬の原料を見つけても、それが本当に医薬品になるまでには、相当の紆余曲折があるようです。偶然の産物といっても過言ではありません。

 この後、人を使った臨床試験(治験)が実施されます。その話は新薬が世に出るまで(2)に書きました。
 
 (この項から以降は、「知らなかった医薬品業界」(造事務所 編著,ダイアモンド社,1998)、「クスリの飲み方 知っておくべきこと」(橋口 亮ら 著,河出書房新社,1999)を参考にしました)

(1999/04/18)

 next: 新薬が世に出るまで(2)

 カテゴリに戻る

 

saty@d-inf.org

制作・著作: 佐藤賛治 (薬のご質問にはお答えできません

(http://d-inf.org/drug/)