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他では聞けないくすりのはなし

献血からHIV感染

 日赤(日本赤十字社)から、エイズウイルス(HIV)の混入した献血からつくられた輸血製剤で、患者がHIVに感染したと、この10月に発表されました。10月7日に一人の感染が確認され、同8日には同一血液でもう一人が感染したことが確認されています。献血者が感染したばかりで、抗体検査でチェックできない空白期間(ウインドーピリオド)だったためとみられています。
 問題の献血は今年7月、関東地方の日赤血液センターで400ml採血されたもので、抗体検査を行った結果は陰性でした。献血された血液は加工され、赤血球製剤は8月に関東地方の男性患者、新鮮凍結血漿は9月に甲信越地方の男性患者にそれぞれ投与されています。輸血によるHIV感染が確認されたのは、1996年にHIVの抗体検査が導入されてから、97年5月に京都府内で判明して以来のことになります。
 従来の抗体検査では、ウインドーピリオドは平均22日でした。日赤は7月から、この期間を11〜16日程度に短縮できる「核酸増幅検査(NAT)」を献血時にも順次導入しています。しかし、今回の血液は、この検査が導入される直前に採血されたものでした。
 従来の抗体検査は、感染してから体内に抗体ができてからでないと検出できませんでしたが、核酸増幅検査は、HIV本体の遺伝子そのものの有無を調べるため、抗体ができる以前でも感染がわかります。しかし、期間は短縮されても空白期間は依然としてあるので、混入を完全に防ぐことはできないとされています。

 エイズウイルス(HIV)に感染した献血が見つかる割合は、この10年で7倍近く増えたという事実があります。日本人の患者・感染者が増加しているのが主な理由ですが、厚生省と日赤は「エイズ検査目的での献血も一因」としています。つまり献血すればエイズにかかったかどうかを無料で検査して教えてくれると思いこみ、安易に感染の可能性のある人が献血をしているという実態があります。しかし、日赤の献血健康手帳(手許にあるものは1998年3月版)を見ますと、HIV抗体検査の結果は献血した人には知らされないと書かれてありますので、検査目的の献血は意味がありません。それどころか今回の例のように、HIV感染をひきおこしてしまう危険性があるので、感染の可能性のある人は献血してはいけません。
 HIV検査は、無料でしかも匿名でも検査できる保健所で受けるべきです。
 輸血製剤の添付文書をみますと
 輸血には同種免疫等による副作用やウイルス等に感染する危険性があり得るので,他に代替する治療法等がなく,その有効性が危険性を上回ると判断される場合にだけ実施する
 とあります。つまり輸血というのは、なんらかのウイルスに感染する危険性をはらんでいるものです。また、人類がまだ知らないウイルスが混入している可能性も否定できません。輸血は、本当に必要な患者さんだけに、患者さんの同意を取って行うものです。
 私が勤めている病院でも、輸血製剤を扱っていますので他人事ではありません。事実、当院の在庫の新鮮凍結血漿のうち、従来の方法で検査をしたものは近日中に核酸増幅検査を行ったものと交換すると、日赤血液センターが伝えてきています。
 (※この項は、朝日新聞朝刊1999年10月8付と佐賀新聞の新聞記事検索データを参考にしました。)

(1999/10/30)

 (補足・追加)
 この項を読まれたある病院薬剤師の方から、こんなメールをもらいました。

 輸血製剤の添付文書を引用の解説で、輸血によるウィルス感染の危険性について説明されます。
 改めて言うこともありませんが、整形・脳外科・婦人科領域でのあらかじめ予定された出血が予想される手術を受ける患者さんに自己血輸血が導入されてきています。
 自己血は医薬品とは少し違っているため、このHPで紹介されるのはおかしいかもしれませんが、ウィルス感染という副作用回避の手段として自己血について補足していただければと思い、メールをしました。

 他人の血液を輸血するということは、確率は低いものの、上に書いたようなHIVなどの感染の他にも、B型肝炎・C型肝炎やその他のウイルス感染、輸血後GVHD(下記参照してください)やショック、蕁麻疹や発熱などの副作用があり、これらを完全に防ぐことはできません。それを避ける意味で、自分の血を貯めておいて自分に輸血する「自己血輸血」が、広く行われています。計画的に手術が予定されているなど時間的に余裕があって、患者さんの状態(血液の状態を含めます)が良好な場合に行われます。
 自己血輸血は自分の血液を輸血しますので、医学的に最も安全な輸血の方法です。
 ●GVHDとは?
 輸血用血液には増殖可能なリンパ球が含有されており、時にリンパ球により患者の体組織が攻撃、傷害されることがあります。これを輸血後GVHDといい、一度発症すると95%以上は致死的な経過をたどります。これを防ぐには、自己血輸血の使用のほか、輸血製剤を放射線照射が有効であると言われています。

(1999/11/06追加)

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制作・著作: 佐藤賛治 (薬のご質問にはお答えできません

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