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他では聞けないくすりのはなし

患者さんから怒られた〜説明することの難しさ

 ある日、薬局の窓口で、外来患者さんが詳しく薬の説明をしてほしいと言ってこられました。もちろん、そのような質問には喜んでお教えしています。それが我々薬剤師の仕事です。しかしその時は勝手が違いました。
 見れば、抗癌剤の内服薬。医者から癌告知されているかどうか分からないので、「これはいろいろな疾患に使う薬ですから、詳しいことはお医者さんに聞いてください」という対応をとりました。すると「あんたは薬剤師なんだろ。薬のプロなんじゃないのか。薬のことは何でも分かるんじゃないのか。医者は忙しいだろうからあんたに聞いているのに、医者に聞けとは何事だ!」と頭ごなしに怒られてしまいました。
 確かにそうです。私は薬剤師で、薬のプロです。しかし、医者と患者さんとの間にどのような説明がされているかわからないと、薬剤師が勝手に説明できないこともあるのです。入院患者では、あらかじめ患者さんのことをチェックできますが、外来患者ではそうはいきません。ですから、外来患者さんで抗癌剤などがでている場合、我々薬剤師のよく使う手として、「お医者さんに聞いてください」という一見逃げているような答えをしているのが一般的です。

まあまあ、おさえて、おさえて

 その後、その方は厚生省に、あの病院の薬剤師(私のことです)はなっとらんと投書されたとかいうことを聞かされました。患者は弱い立場で薬のことが何も分からないのに、ちゃんと説明してくれなかったというのがその投書の主旨でした。その件で、こちらの対応がまずくなかったか、言葉遣いは乱暴でなかったか上司に問いただされました。もちろん、こちらに威嚇的な態度はなかったと思っています。そしてその後、主治医にお会いして、案の定、家族のたっての願いで、本人には癌告知がされていないということが分かりました。
 その時の反省点としては、抗癌剤を見せられたときに、「少々お待ち下さい」と奥に引っ込んで、外来の診察室に電話をして、その患者さんにどんなムンテラ(病状の説明)がされているのか確かめればよかったということです。でも、そのときは外来が混んでいるときで、あまり余裕が無く、そこまで頭が回らなかったというのが真相です。
 しばらくたって、薬局の窓口に、またその方が来られました。その方のお顔を見て、私はちょっとドキッとしましたが、その時は、医師からその抗癌剤はポリープの薬であると説明してくれと言われておりましたので、そのように言って薬を渡しました。この前の雰囲気とは違い、「前はよく分からなかったが、今回はよく分かった」と言われました。その方の表情は、にこやかでした。
 しかし、更に「ポリープとは何だ?」「できもののようなものです」「癌とは違うのか?」「ええ、癌とは違います」そのようなやりとりをしました。説明した後、どうも後ろめたい気持ちがあったのは事実です。世の中にはつかなければならない嘘もあります。
 世の中の流れとして、情報は公開されるという方向にあります。癌告知も、徐々に進んでいっていると思います。しかし現状では、余命幾ばくもないとか、告知すれば本人がショックを受けるなどといった理由で、家族には告知しても、患者さん本人に癌告知がされていない場合があります。全てを正直に、ありのままに話すことができたら、我々薬剤師も楽なのですが、そうはいかない場合もあるのです。

(1999/04/10)

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制作・著作: 佐藤賛治 (薬のご質問にはお答えできません

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