
他では聞けないくすりのはなし
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病院薬剤師の仕事は、調剤だけやっているわけではありません。患者さんに対して薬の説明をし、薬が適正に投与されているか、副作用はでていないかなど確認する薬剤管理指導(服薬指導ともいわれています)や、薬の血中濃度測定、患者さんに投与するための注射薬の混合などがあります(病院薬剤師の仕事に関しては、愛媛県薬剤師会のホームページ中、病院薬剤師の仕事(http://www.yakuehime.jp/pa/index.html) がわかりやすくておすすめです)。
それに加えて、院内製剤を調製するという業務もあります。製薬会社から製造・販売されていなくて、臨床上どうしても必要な薬をつくる業務です。
これまで病院薬剤師が院内製剤していたものの中に、無水エタノール注というものがあります。無水エタノールとは、99.5%以上の純度のエタノールが含まれている消毒剤で、細胞を壊死させてしまう作用があります。その効果を利用して、肝細胞癌に無水エタノールを注入して、肝細胞を壊死させるという方法(肝細胞癌の経皮的エタノール注入療法;PEITと略します)は、多数の使用経験があるにもかかわらず、医薬品として認められていなくて、医療現場で無水エタノールを院内製剤として調製しているのが実際のところでした。
このたびこの無水エタノール注がメーカーから発売されることになったという話をききました。日本肝癌研究会、日本病院薬剤師会からの要望により、申請し承認されています。実は、2004年10月に新薬として承認されており(http://www.info.pmda.go.jp/shinyaku/g0410.htmlを参照して下さい)、やっと2005年5月に発売になるということです。いまのところ、PEITの診療報酬点数として1000点が認められており、無水エタノール注もそのなかに含まれるということで、実際に無水エタノール注自体に薬価がつくのが、2006年4月と聞いています。

実際に肝細胞癌の方で、PEITを施行されている方はけっこういらっしゃいます。そして、かなりいい成績であるように思います。ただ従来、院内製剤として十分に注意してつくってはいるものの、PEIT後に熱が出る方がいらっしゃいました。それが製薬会社で製造・販売してもらえるということは、安全性を考えるといいことだと思います。なによりも薬剤師の調製の手間を省けるのがうれしいことです。空いた時間で、病棟に行って患者さんにくすりの説明ができます。
昔、お酒に非常に弱い薬剤師が、この製剤を作ったときに酔っぱらってしまって苦労したという話を聞いたことがあります。製剤時に無水エタノール自体が揮発することや、充填時に消毒用エタノールを噴霧して消毒するので、アルコールに弱い薬剤師には酷だったかも・・・。そんな薬剤師にも朗報かもしれません。
今回の無水エタノール注だけではなく、錠剤を半分にして調剤しなければならないものを、製薬会社が半分の含有量で1錠分の錠剤として製剤化してくれたこともあります。強心剤のジゴキシンという錠剤は、半錠をのまれる場合、従来は薬剤師が半分に割って調剤していました。半錠でのまれている患者さんが相当数いらっしゃいますので、製薬会社が半錠の成分が入ったものを1錠の錠剤(ハーフジゴキシンという商品名)として製造するようになったという事例もあります。
院内製剤という仕事、随分昔は、消毒薬を目的の濃度に希釈するようなことが主な製剤業務だったような気がします。現在は、昔に比べて院内製剤を調製することは少なくなってきています。というのも、従来やっていた消毒薬の希釈も、製薬会社がはじめから目的の濃度に希釈をした製剤を製造・販売してくれていますので。今回の無水エタノール注やハーフジゴキシン錠の件をみると、院内製剤に限って言えば、病院薬剤師にとってだんだんとありがたい時代になりつつあります。院内製剤はどうしても現場で必要だからつくるのであって、安全性を考えると、できれば製薬会社がつくるべきです。また、病院薬剤師としても、院内製剤を一生懸命やったところで、診療報酬上の点数がつくわけではないので、製薬会社にお任せして、その空いた時間を少しでも患者さんのもとに行って、薬剤管理指導をするべきだと思います。
(2005/05/01)
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制作・著作:
佐藤賛治 (薬のご質問にはお答えできません)(http://d-inf.org/drug/)