13局の薬局方より抜粋

溶出試験法

−注−

注1

溶出試験法は、本来ならば直接生物学的有用性との対話が望ましいが、現時点では、製剤設計並びに品質の管理手段としての試験法にとどめざるを得ないと判断され、また溶出性の優れた製剤(先発製剤)と同一の溶出速度及び溶出特性を持つものを選び、かつバイオアベイラビリティの劣る可能性のある製剤を取りのぞくことを目的とするという考え方に基づいて作成されたものである(→解説)……………以下1部略

 

―解説―

DissolutionUSP、Dissolution Test for Tablets and Capsules BP EP

固形製剤の品質評価については、従来から製剤に配合されている有効成分の確認、純度、含量(力価)などの化学的試験のほか、硬度、重量偏差、崩壊試験などの製剤学的試験を主体とした品質試験が行われてきた。しかし、最近では、期待した有効性及び安全性の観点から品質の適合性が論ぜられ、Bioavailabilityを予測する手段としての溶出試験が重要視されるようになった。

1970年にUSP][、NF[に初めて溶出試験が導入され、次いで1975年にBP73の追補ではdigoxin錠に溶出試験が規定されて以来、USP]]Uでも、製薬メーカーの協力のもとに、有効性基準を確立することを究極目標として、収載の経口固形製剤の多くに溶出試験が適用され、ApparetusMedium及びProcedureなどが規定されている。

経口固形製剤の溶出状態を観察することは、製剤に配合されている有効成分のbioavailabilityに影響を与える処方及び製造工程の諸変動を管理するための有用な判断基準となり、また、in vitro試験がin vivobioavailabilityの結果と相関性のいかんを問わず、製剤工程の変動を管理するためにも望ましい手助けとなることは十分考えられるところである。すなわち、溶出の測定は、製剤時に製剤の均一な品質を評価する上で信頼すべき指標となっている。医薬品各条において溶出試験が規定されている場合は、溶出試験を省略するという考え方がとられることになるが、USP23ではpharmaceutical dosage formstabletに記載されているdisintegration and dissolutionの項に難溶性薬剤は崩壊よりむしろ溶出のほうがより意義のある品質特性を現わすものであることを述べている。

わが国においては、昭和46年薬審第589号“医薬品の製造承認申請における資料提出について”のなかで、製品の吸収、分布、代謝及び排泄に関する資料に「適切な溶出試験による結果と臨床効果との間に相関関係があることが文献により明らかになる場合は、その溶出試験についての比較試験成績に関する資料をもってこれに代えることができる」とされ、また、昭和50年薬審第526号“新医薬品の製造(輸入)承認申請に際しての留意事項”(9)の臨床試験に「二重盲検試験に使用した治験薬について含量、崩壊性および溶出試験の成績を提出すること」など、医薬品の承認基準の行政指導に溶出試験の必要性が重視されて来た。

各種銘柄製剤の生物学的同等性が医療上問題視されるようになり、薬効を適切に評価できるin vitroの試験法を決めるため、昭和47年から3箇年間厚生科学研究“医薬品製剤の溶出試験に関する研究”でin vivo及びin vitroの溶出の基礎研究がなされ、更に昭和52年から“医薬品の生物学的同等性”の判定基準の作成が計画され実行に移された。

溶出試験に関するものとして「生物学的同等性の試験方法についての解説」があり、更に昭和6061年度厚生科学研究「日本薬局方溶出試験法の設定基準と試験条件に関する研究」報告書がある。

以下に現在の考え方を紹介する。

1.溶出試験法の意義(目的)

特定の処方を持つ製剤の有効性、安全性は、最初に適切なin vivoの研究と臨床上の評価によって確認されなければならないものである。そして溶出試験そのものは本来、in vivoの試験データ、臨床上の評価との相関性によって適格に溶出量の規格が設定されるものであり、かつ固形製剤の溶出を測定する客観的方法として規定されるべきものである。また、薬物の吸収、生物学的利用性は薬物の溶解状態に大きく依存するため、適正な溶出特性は薬剤の有効性に重要な因子となると考えられる。

医薬品の有効性、安全性の確保を考えた場合、同一医薬品の銘柄間及びロット間の生物学的非同等性は防がなければならないことは当然である。そして、この非同等性を防ぐための方法の一つとして溶出試験が考えられている。しかも日本薬局方では、これまで溶出試験を品質管理のための物理化学的試験として認めてきた経緯がある。それは溶出試験の結果がbioavailabilityと必ずしも良い相関を示すとは限らないからである。

この相関性が成り立たなくなる主な原因は、試験管内と消化管内では薬物の溶出する環境や条件が異なることにある。特に、pH、攪拌などの影響により溶出速度が変化しやすい製剤では、in vitroの条件をよりin vivoの条件に近づけないと概して相関が成立しにくいのである。

二つの異なる製剤がどの試験条件でもほぼ同程度の溶出速度を示すならば、製剤間にbioavailabilityの差を生じることも少ない。すなわち、溶出試験の結果からbioavailabilityの差を予測することは困難としても、溶出試験で生物学的同等性の確保を図ることはある程度可能と考えられている。そして生物学的非同等性を防ぐ方向で溶出試験の規格設定を考慮することが必要と考えられるようになった。この観点から、溶出試験を「医薬品の品質を一定水準に確保し、生物学的非同等性を防ぐことを図るための試験」として位置づけることにされたのである。

溶出試験は、出来るだけ多くの試験条件下で行うほうが、生物学的非同等性はより確実に防ぎ得ると考えられるが、多くの条件下における規格設定は実際上困難であり、それぞれの製剤において生物学的非同等性が最もとらえやすいin vitroの試験条件を選択して、規格・試験法を設定することになる。

2.溶出試験の適用品目の選定に関する考え方(溶出試験が適用される製剤)

生物学的非同等性を生じる可能性のある製剤に溶出試験を適用する。この観点から生物学的非同等性を生じやすい製剤として、次のような要因をもつ製剤が適用対象となると考えられる。これは昭和6061年度厚生科学研究「日本薬局方溶出試験法の設定基準と試験条件に関する研究」総合報告書が基となっている。

(1)   銘柄間あるいはロット間で溶出速度が変動しやすい製剤

(@)薬物の物性に起因する場合

a.消化液に対する溶解性が低い薬物を含む製剤

b.結晶多形により溶解性が変化する薬物を含む製剤

(A)製剤的理由に起因する場合

a.糖衣又はフィルムなどの剤皮が施されている製剤

b.主薬と添加物の配合比が過大また過小な製剤

(2)   初回通過効果等のために溶出速度の変動がbioavailabilityの大きな変動につながりやすい薬物を含む製剤

(3)   これまでに生物学的非同等性が問題になった製剤あるいは溶出速度とbioavailabilityとの関連性が報告されている製剤

なお、適用対象の製剤のなかで、(1)銘柄数が多いために銘柄間の非同等性が考慮される製剤、(2)生物学的非同等性が有効性、安全性に影響しやすい薬物を含む製剤(例えば薬効が血中濃度に依存している薬物、治療濃度域が狭い薬物、強い主作用、副作用を示す薬物を含む製剤など)に対しては優先的に溶出試験の適用が図られるものと考えられている。

また、崩壊試験と溶出試験の結果との間に関連性が認められる場合には、崩壊試験の効率性を考えて、溶出試験の代わりに崩壊試験を適用することも考えられる。

以下略

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